※本記事は広告・PRを含みます。2026年5月時点の情報をもとに作成しています。
この記事でわかること
- ヴィクトリア朝の執事の仕事内容
- 執事文化の衰退と復活
- 今のイギリスの家事代行と、日本との違い
先に結論:イギリスの執事は、家全体を切り盛りする専門職でした。時代とともに数を減らしたあとも、その仕事ぶりは今の家事代行やホスピタリティの考え方に受け継がれています。「執事なんて、映画の中だけの話」と思っている方も、今の家事代行とのつながりを知ると、少し身近に感じられるかもしれません。
「執事」と聞いて、何を思い浮かべますか? 燕尾服に身を包み、銀のトレイで紅茶を運ぶ上品な紳士の姿でしょうか。
イギリスの執事文化は、洗練された家事サービスの原型ともいえます。ヴィクトリア朝の大邸宅で働いた執事たちのプロ意識は、今のハウスキーピングサービスにも受け継がれています。
この記事では、イギリスの執事文化の歴史と、その精神が現代の家事代行サービスにどうつながっているのかをたどっていきます。
ヴィクトリア朝の執事|「ダウントン・アビー」の世界は実在した
19世紀のヴィクトリア朝時代、イギリスの貴族や大地主の邸宅には、数十人規模の使用人が雇われていました。その頂点に立つのが「バトラー(Butler=執事)」です。
ドラマ「ダウントン・アビー」で描かれたカーソンのような執事は、作り話の中だけの存在ではありません。実際のイギリスのカントリーハウス(大邸宅)では、執事を筆頭に、ハウスキーパー、フットマン(給仕係)、メイド、コック、庭師など、厳格な階層構造のもとで使用人たちが働いていました。
ヴィクトリア朝のイギリスでは、使用人を雇うことは単なる家事の外注ではなく、社会的地位の象徴でした。使用人の数や質が、その家庭の格を示す目安でもあったのです。
執事の役割は、家事の管理だけにとどまりません。邸宅全体の運営責任者として、ワインセラーの管理、銀食器の保管、晩餐会の采配、来客の応対など、幅広い仕事をきっちりこなすことが求められました。その専門性と献身は、現代のホスピタリティ業界の基盤を築いたともいわれています。
執事の仕事内容|銀食器磨きからワインセレクトまで
ヴィクトリア朝の執事の仕事は、びっくりするほど幅広いものでした。ある一日の流れを、例として見てみましょう。
朝は使用人たちの起床確認から始まります。執事は使用人全体の管理者として、全員が定刻に仕事を開始しているかを確認します。次に、主人の朝食の準備が整っているか、食堂のセッティングに不備がないかをチェックします。
午前中は銀食器の点検と磨き上げが重要な仕事でした。イギリスの上流家庭では銀食器は資産の一部であり、その管理は執事の最も重要な責務の一つです。専用の磨き粉を使って一つひとつ丁寧に手入れし、傷や変色がないかを確かめます(想像するだけで腕が疲れてきます)。
午後になると、ワインセラーの管理が待っています。どのワインをどの料理に合わせるか、在庫の管理、適切な温度での保管など、ワインに関する深い知識が不可欠でした。晩餐会のメニューに合わせたワインのセレクトは、執事の腕の見せどころです。
晩餐会がある日は、テーブルセッティングからサービスの指揮まで、すべてが執事の管轄でした。ゲストの座席配置、食器やグラスの配置、給仕のタイミングなど、細部にまで気を配りながら完璧な夕食を演出することが求められました。
このように、執事は「家事をする人」ではなく、「家全体を運営するプロフェッショナル」でした。その専門性と責任感は、現代の家事代行サービスの原点ともいえます。
20世紀の衰退と21世紀の復活
イギリスの執事文化は、20世紀に入ると急速に衰退していきます。その最大の原因は、二度の世界大戦でした。
第一次世界大戦では、多くの若い男性が戦場に送られ、使用人として働く人材が激減しました。戦後も、工場労働やオフィスワークなどの新しい職業が増えたことで、使用人として働くことを選ぶ人は減り続けました。
第二次世界大戦後は、社会の民主化と平等意識の高まりにより、「使用人を雇う」という行為自体が時代遅れと見なされるようになります。大邸宅の維持費の高騰や相続税の負担もあり、かつての貴族階級が大勢の使用人を抱えることは事実上不可能になりました。
ところが21世紀に入ると、執事は思わぬ形でふたたび注目されます。海外の富裕層などから、イギリス式の執事サービスを求める声が出てきたのです。執事を育てる学校もあり、世界各地から生徒が集まっています。
よく名前が挙がるのが、オランダにある「The International Butler Academy」です。公式サイトでは、8週間の執事養成コースが案内されています(2026年9月に公式サイトで確認)。
現代のイギリスの家事代行サービス事情
執事文化の伝統を持つイギリスでは、現代の家事代行サービスも独自の発展を遂げています。
イギリスの家事代行は、大きく2つの層に分かれています。一つは、富裕層向けの高級なハウスキーピングサービスです。住み込みのハウスキーパーやナニー(子守り)を雇う家庭は今でもあり、待遇は経験や勤め先によって大きく違います。
もう一つは、一般家庭向けのクリーニングサービスです。ロンドンのHousekeepのように、オンラインで申し込めるサービスがあります(以前よく名前が挙がったHassle.comはその後Helplingとなり、Helplingは2025年3月にイギリスでの事業を終えています)。料金は地域や頼む内容で変わるため、各サービスで確かめる必要があります。こうしたオンラインのサービスは、日本のマッチング型サービスと似た仕組みです。歴史的な背景もあって、「家事を人に頼む」ことが日本より身近だという見方もあります。
イギリスらしい習慣として面白いのが、「スプリングクリーニング」です。春に家じゅうを大掃除する伝統があり、この時期にプロへ頼む家庭もあります。窓の内外やカーペットの奥の汚れ、オーブンの掃除などを任せる、といった具合です。日本の年末の大掃除が、春に来るようなイメージですね。
また、イギリスには、アイロンがけ専門の家事代行サービスもあります。シャツやシーツのアイロンがけを、まとめて外に頼む使い方です。
日本とイギリスの家事代行文化の比較
日本とイギリスの家事代行を比べてみると、共通点と違いが見えてきます。
共通点は、両国とも「島国」で、家の中の清潔さや整頓を大切にする文化があるとよくいわれる点です。日本の「おもてなし」の精神とイギリスの「ホスピタリティ」の伝統には、相手への配慮を大事にするという共通の価値観も見られます。
大きな違いは、家事代行が社会にどれだけ受け入れられているかです。イギリスでは執事文化の長い歴史があるため、「プロに家事を任せる」ことが自然な選択肢になっているといわれます。一方、日本では戦後の「主婦が家事を担う」という価値観が根強く、家事代行の利用に罪悪感を覚える人が少なくありません。
サービスの質への期待にも違いがあります。イギリスでは執事文化の影響から、家事代行スタッフにも高いプロ意識が求められます。日本の家事代行サービスも品質は高いですが、「プロフェッショナルとしての誇り」という面では、イギリスの伝統から学ぶべき点があるかもしれません。
もう一つの違いは、家事代行を「キャリア」として捉えるかどうかです。イギリスでは、ハウスキーパーや執事は専門的な職業として社会的にも認知されています。日本でも、家事代行を「プロフェッショナルなキャリア」として確立していくことが、業界全体の発展につながるでしょう。
まとめ

イギリスの執事文化は、ただの歴史の話ではなく、今の家事代行サービスにもつながっています。プロ意識、細部へのこだわり、ホスピタリティの精神。これらの価値観は、国や時代を超えて、質の高い家事サービスの本質を示しています。
日本の家事代行サービスも、独自の形で進化してきました。家事代行を「贅沢」ではなく「合理的な選択」として捉え、プロのサービスを気軽に活用できる社会へと、少しずつ変わりつつあるのです。
まだ家事代行を試したことがない方は、各サービスの特徴を比べるところから始めてみてください。
執事ほどではなくても、「毎回同じ人に来てほしいか」だけ先に決めておくのも、会社選びのよい近道です。

